あけび書房通信
メールマガジン「あけび書房通信」の入退会は、こちらのフォームにメルアド登録お願いいたします。
または、info@akebishobo.comまでご連絡ください。
第60号
「あけび通信」第60号をお届けいたします。 ○-●-○-●【新刊ご案内】イラク戦争の検証を求めるネットワーク編『イラク戦争を知らないキミたちへ』○-●-○-●https://akebishobo.com/product/iraq定価1760円(税込み)ISBN 978-4-87154-207-4 C303146判 226ページ イラク戦争開戦日の3月20日発売予定です。 昨年の3月20日に同ネットワークがYouTube上で開催したイベントをもとに、寄稿などを集めて再構成しました。 今年はイラク戦争から19年、来年は20年ということで、今の若者にとっては物心がついていない歴史のお話しになっているので(私がベトナム戦争のことを考えるぐらいのもの)、次世代にこの誤った戦争の意味を伝えるために、1年がかかりでできました。 2009年に民主党への政権交代もあって、小泉自民党政権が支持し憲法違反の自衛隊の海外派遣までしたイラク戦争の検証を求めるチャンスだと、イラク戦争の検証を求めるネットワークが立ち上げられ、私も当初から参加しました。そうした個人的な思いもあって、イラク戦争をテーマにした本は必ず上梓したいと願っていて、出版を実現することになりました。 それも、平和活動家から政治家、ジャーナリスト、NGO、そして当事者のイラクの若者に日本の若者など、反戦平和の思いを次世代にバトンをわたすよう多様な方々それぞれの思いを語っています。もちろん、この大義なき戦争を止めることができず、いまだに検証を果たせていない私たちの責任として、若い世代に負の遺産を残さないよう継承しなければならないですが。 さて、イラク戦争を振り返れば、またもや物議を交わしているEU書簡を出した元首相、https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/77001.htmlとくに小泉純一郎氏の欺瞞・不誠実さを特記せざるを得ないです。放射能デマという点でも許しがたいですが、輪をかけて、小泉氏には「おまゆう」です。イラク戦争支持と同じく、目的のためには嘘をついてもしらを切るところは変わらないのか。 以下、イラク戦争の検証を求めるネットワーク事務局長・志葉玲さんが書かれた本書序章から紹介します。========================== 13 イラク戦争の検証が必要 開戦の大義名分とされた大量破壊兵器は発見されず、報道で確認できているだけでも、現在までに29万人近くの人々が犠牲となり、今なお現地情勢に混乱をもたらし続けるイラク戦争。日本の戦争支持も、見直されるべきです。ところが、当の小泉元首相は、歴史修正主義とも言えるような、事実を捻じ曲げる発言をしています。 2021年3月1日の外国人特派員協会での会見で、中東メディアの記者にイラク戦争支持の是非について質問された小泉元首相は、「イラクが査察認めていれば戦争は起きなかった」などと、開き直ったのです。 「これも一般的に言うと、アメリカはなんでイラク戦争を始めたんだと批難が、批判があったのはわかる。しかし、イラクが査察認めてれば戦争起こんなかったんです。なんで査察を認めなかったのかと。隠してると思ったんだよな、アメリカは。結果、大量破壊兵器はなかったんだけども」(2021年3月1日の会見での小泉元首相の発言) これが事実と大きく異なることとは言うまでもありません。本章ですでに触れたハンス・ブリクス元UNMOVIC委員長の証言にもあったように、イラク側は査察を受け入れていました。また、小泉元首相は、「イラクが査察を認めてれば、国連でも決議してるんだから、受け入れれば戦争起こんなかったんです」とも発言しました。これは、イラクへ大量破壊兵器の査察への全面的な協力を求める国連安保理決議1441号のことを指しているのでしょうが、これのみでは、対イラク武力行使容認決議とはみなされないというのが通説です。2016年に膨大な検証報告書を公表したイギリスの「イラク戦争調査委員会」でも、ジョン・チルコット委員長が「イラクへの軍事行動は、最後の手段ではなかった」「軍事行動に法的根拠があるとは到底言い難い」と、米国と共にイラク戦争を開始した英ブレア政権を厳しく批判しているのです。 ・・・(略)・・・ 小泉元首相が開き直っていられるのは、日本ではイラク戦争の検証が十分に行なわれていないからでしょう。外務省は2012年12月、イラク戦争に関連して「大量破壊兵器情報についての検証」を行ったとして、その概要を公表しましたが、それはA4用紙4枚だけで、報告書全文は公開されませんでした。そもそも、この「検証」は、日本政府がイラク戦争を支持したことの是非自体について検証したものですらないのです。イラク戦争の開戦経緯について嘘をつき、約29万人の戦争犠牲者を愚弄するような小泉元首相の主張は絶対に許されません。今後の日本の外交・安全保障政策への教訓としても、日本としてのイラク戦争の検証はしっかりと行なわれるべきでしょう。========================== 上記の通り小泉氏が嘘を語った<2021年3月1日の外国人特派員協会での会見>は、原発問題についてが主なテーマでした。https://www.j-cast.com/2021/03/02406214.html?p=allhttps://www.youtube.com/watch?v=_2pXbFD18lQ原発に反対を主張しているからといって、イラク戦争への反省がない方を持ち上げるのはやはりおかしいと思わざるをえません。 なお、<A4用紙4枚だけ>で開戦とその支持は間違いなかったと「検証」して終わりにしたのは、民主党政権でした。 元首相らが過去を反省したかしないかともかく反原発を主張するのは(放射能デマを言わなければ)いいけど、数十万人が犠牲となりいまも復興できないイラクの人たちに償い、憲法を否定してまで海外派遣で自衛官をも戦場に送ってしまったことなど、イラク戦争の検証をまともに行わなかったことも反省してほしいところです。 とくに小泉さんは当時の首相として、本当のことを語り過ちを認めるべきです。今年の3月、原発事故3.11から11年、イラク戦争3.20から12年の今、ぜひ手に取っていただきたい新刊です。 あけび書房代表 岡林信一 【3月3日発売予定新刊】■一ノ瀬正樹、児玉一八、小波秀雄、髙野徹、高橋久仁子、ナカイサヤカ、名取宏/著『科学リテラシーを磨くための7つの話―新型コロナからがん、放射線まで』定価 1980円(税込み)ISBN978-4-87154-204-3 C3040A5判 184ページhttps://akebishobo.com/product/restoration ■冨田宏治/著『維新政治の本質 組織化されたポピュリズムの虚像と実像』定価1760円(税込み)46判 204ページISBN978-4-87154-206-7 C3031 https://akebishobo.com/product/restoration ■琴天音/著『体内時計にも個性があります』定価 1760円(税込み)46判 212ページISBN978-4-87154-203-6 C20473月3日発売予定小社に直接注文いただけます。https://akebishobo.com/product/bodyclock 【好評発売中】■色平哲郎/著『農村医療から世界を診る 良いケアのために』https://akebishobo.com/product/ruralmedicine定価 2200円(税込み)46判 378ページISBN:978-4-87154-202-9
第59号
「あけび通信」第59号をお届けいたします。 ○-●-○-●【新刊ご案内】一ノ瀬正樹、児玉一八、小波秀雄、髙野徹、高橋久仁子、ナカイサヤカ、名取宏 著『科学リテラシーを磨くための7つの話―新型コロナからがん、放射線まで』○-●-○-● 定価 1980円(税込み)ISBN978-4-87154-204-3 C3040A5判 184ページ3月3日発売小社に直接注文いただければ2月21日より送料無料でお届けできます。https://akebishobo.com/product/restoration 新型コロナをめぐるニセ医学、陰謀論、フードファディズム、便乗商法について行政や政治家の問題について触れつつ、そうした怪しい情報に惑わさないセンス、またそれらを信じてしまった人たちにどのようにコミュニケーションすることが大事なのかなど、各専門家に書いていただいています。 また、11年目の3.11が近づいていますのであらためて放射能をめぐって、避難のリスク・予防原則の問題、処理水排出問題、甲状腺検査の過剰診断について取り上げています。いまさら放射能の話なんてコロナのことがあるので忘れ去られている頃だろうと思っていましたが、いまだに甲状腺がん「多発見」について差別・偏見を生みかねない問題が起きたりしていますし、https://www.minyu-net.com/news/news/FM20220203-682932.phpALPS処理水の海洋排出の是非をめぐる対立があり、そもそも原発の是非を考えるうえでも健康被害の甚大さは震災関連死の多さ、つまり、原発事故から避難した結果として大量の死者が出たということの考察は、今でもなおされてしかるべきことでしょう。 とくに、『福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか』https://akebishobo.com/product/fukushima-3に続いて、いまだに過剰診断を認めず検査の中止ないし抜本的見直しがされない現状について、髙野さんに「過剰診断のメカニズム―「思い込み」と「責任回避」で歪められる科学」と題してあらためて書いていただいています。 あけび書房は左派リベラルに親和的な本を出しているのに、なぜ放射能の問題では左派リベラルに批判的な本を出すのかと疑問を抱く人たちがいるかもしれませんが、それは左派リベラルには放射能の問題でミスリードしまくっている傾向があるからです。科学的見識をきっちりおさえて人権問題として正しい問題提起を本来なら左派リベラルこそがすべきなのに、逆に政治的には右派や原発容認派にお株をとられて墓穴を掘っている状況をなんとか転換したいのです。なによりも過剰診断で実害が与えられている福島の子どもたちの人権を守る必要性に、そろそろ気づいてもらいたいものです。 あけび書房代表 岡林信一 【3月3日発売予定新刊】■冨田宏治/著『維新政治の本質 組織化されたポピュリズムの虚像と実像』 定価1760円(税込み)46判 204ページISBN978-4-87154-206-7 C3031 https://akebishobo.com/product/restoration ■琴天音/著『体内時計にも個体差があります』定価 1760円(税込み)46判 212ページISBN978-4-87154-203-6 C20473月3日発売予定小社に直接注文いただけます。https://akebishobo.com/product/bodyclock 【好評発売中】■色平哲郎/著『農村医療から世界を診る 良いケアのために』https://akebishobo.com/product/ruralmedicine定価 2200円(税込み)46判 378ページISBN:978-4-87154-202-9
第58号
「あけび通信」第58号をお届けいたします。 ○-●-○-●【新刊ご案内】冨田宏治/著『維新政治の本質 組織化されたポピュリズムの虚像と実像』○-●-○-● 定価1760円(税込み)46判 204ページISBN978-4-87154-206-7 C3031 小社に直接注文いただければ2月21日より送料無料でお届けできます。https://akebishobo.com/product/restoration 昨年末には冨田さんには北畑淳也さんとの共著『今よみがえる丸山眞男 「開かれた社会」への政治思想入門』を出してもらいました。https://akebishobo.com/product/maruyamaこれは冨田さんご専門の日本政治思想史の研究成果を一般市民に分かりやすく書いてもらっていて、いわば「本店」の作品ですが、今度は「夜店」というか市民としての政治的義務たる維新とのたたかいについて、参与観察による政治学的分析の本です。 日刊ゲンダイのインタビュー冨田宏治氏が喝破「大阪で維新を支持しているのは貧困層を憎悪する中堅サラリーマン層」https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/298204がかなりバズって注目されていることもあったので、急遽、ここ7年間書きためた論考を再構成してまとめてもらいました。ただ、「おわりに モンスター的集票マシンとどう対峙するか?」は本書書き下ろしで、今夏の参議院選挙と来年の統一地方選挙で、維新とどう対決するか、それもかなり大胆に踏み込んだ提案をされています。いつもはHPで「おわりに」を立ち読みできるよう公開していますが、本書ついてはネタバレではないですが、買って読んでもらう値うちがあるから出し惜しみします。 基本は「不寛容なポピュリズム」に対して、一致する点で共同する「寛容とリスペクトの政治」に習熟し、「大阪市廃止」住民投票で発揮された路地裏を主戦場にした対面的政治対話を展開していく、まさに知的道徳的な「ヘゲモニー」の実践として、地を這うような「陣地戦」でたたかうということです。 いまや日本維新の会は世論調査の政党支持率では立憲民主党を抜いて第2党になっているのですから、帯に書いていますように、まさに「維新政治は大阪だけの問題ではない!」です。今夏の参議院選挙で改憲発議できる3分の2以上を与党と維新に奪われたら、いよいよ国民投票が待ち構えています。冨田さんは各地で講演活動されるそうなので、本書を普及することで、新自由主義と国家主義的改憲を食い止める力にしていきたいです。 あけび書房代表 岡林信一 【3月3日発売予定新刊】琴天音/著『体内時計にも個体差があります』定価 1760円(税込み)46判 212ページISBN978-4-87154-203-6 C20473月3日発売予定小社に直接注文いただけます。https://akebishobo.com/product/bodyclock 【好評発売中】色平哲郎/著『農村医療から世界を診る 良いケアのために』https://akebishobo.com/product/ruralmedicine定価 2200円(税込み)46判 378ページISBN:978-4-87154-202-9
第57号
「あけび通信」第57号をお届けいたします。 ○-●-○-●【新刊ご案内】琴天音/著『体内時計にも個性があります』○-●-○-●定価 1760円(税込み)46判 212ページISBN978-4-87154-203-6 C20473月3日発売予定小社に直接注文いただければ本日より送料無料でお届けできます。https://akebishobo.com/product/bodyclock 3月はあけび書房でいくつか本を出しますので順次ご紹介します。まずは、琴天音さんの『体内時計にも個性があります』https://akebishobo.com/product/bodyclock 人間には<社会生活における時間>と<それぞれが持つ体内時計>という2つの時間軸があるということで、私も大変勉強させてもらいました。 生まれ持った体内時計の傾向(クロノタイプ)に逆らって生活すると健康を損ない、最悪の場合は至ることもあるとのことで、実際、著者の琴さんの次男も睡眠・覚醒相後退障害(DSWPD)による慢性寝不足を原因に自死されています。そうした重い経験も語りつつ、労働や学校の時間といった社会生活を体内時計に合わせるよう改善することなどを提案されています。過労死ラインまで働かされる長時間労働(とくに教員)、子どもの自殺・虐待・不登校といった社会的問題も絡めて、働く人の健康と幸福について睡眠を切り口に考察されています。 コロナ禍で睡眠に一層の問題を抱える人たちが増えているそうですが、QOLを考えるうえで睡眠のリズムを見つめ直すためにもぜひおすすめです。 なお、眠れない人には、『「二桁九九」で眠る 眠れないあなたに』(野崎佐和著)をおすすめします。https://akebishobo.com/product/futaketakuku あけび書房代表 岡林信一 ■好評発売中色平哲郎/著『農村医療から世界を診る 良いケアのために』https://akebishobo.com/product/ruralmedicine定価 2200円(税込み)46判 378ページISBN:978-4-87154-202-9
第56号
「あけび通信」第56号をお届けいたします。この間、小社の書籍が書評されましたのでご紹介します。 ■『鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義』高橋信雄著https://book.asahi.com/article/14517417◆「鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義」書評 膨張する日本を監視した言論人 評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2022年01月08日https://book.asahi.com/article/14517417◆膨張政策に否 孤高の新聞人 [評]御厨貴(政治学者) 東京新聞 1月23日 https://www.tokyo-np.co.jp/article/155712◆西日本新聞 1月8日https://www.nishinippon.co.jp/item/n/858544/◆週刊金曜日1月28日号 加藤直樹さんが書評を載せていただいています。 http://www.kinyobi.co.jp/tokushu/docs/1362.pdf ■『リコール署名不正と表現の不自由―民主主義社会の危機を問う』中谷雄二、岡本有佳編https://akebishobo.com/product/recall法学館憲法研究所が紹介いただいています。」http://www.jicl.jp/ronbun/backnumber/20220117.html朝日新聞の関西各地域版でも紹介されています。https://www.facebook.com/photo?fbid=4545506392244720&set=gm.5028905720474410 ■『原爆スラムと呼ばれたまち ひろしま・基町相生通り』石丸紀興、千葉桂司、矢野正和、山下 和也著https://akebishobo.com/product/genbaku◆図書新聞2月5日号に仙波希望さんが書評いただいています。https://www.facebook.com/253887338079913/photos/a.807568449378463/2552067978261826/
第55号
「あけび通信」第55号をお届けいたします。 ○-●-○-●新著ご紹介 色平哲郎『農村医療から世界を診る 良いケアのために』○-●-○-●https://akebishobo.com/product/ruralmedicine 2,200円(税込み)378ページISBN:978-4-87154-202-9 長野県蘇南高等学校校長の小川幸司さんがFacebookでご紹介いただきました。小川さんの承諾を得て、以下転送いたします。 「何のために私たちはこの場にいるのか」 佐久総合病院の色平哲郎先生が、『農村医療から世界を診る―良いケアのために』という新著を出版されました(あけび書房、2200円)。日経メディカルOnlineの連載記事をもとにして、序や補遺の文章を合わせて編まれた一書です。 「序」は、軽井沢の別荘で加藤周一と著者が重ねた、医療についての対話の記録です。著者が「一般の人々(people)」を主語にする「メディカル・リテラシー」(医学・医療を読みとくこと)が大切だと言うと、加藤が大いに共感して、中世ヨーロッパの詩のなかにある「私たちのいないところで私たちのことを決めないで」という「ケアの女神クーラ」の言葉をひきながら、介護と看護を別ものとしない「ヒューマン・ケア」の考え方が大切であると応えています。 では、医学・医療が人々を主人公として尊重するとはどういうことか、このことについて、博覧強記の著者は折々の出来事、これまで出会った人々のこと、自らの実践などをまじえながら論じています。 ――終戦直後、戦災孤児と障がい者の施設「近江学園」を創設した糸賀一雄は、「この子らを世の光に」と言った。その言葉は「この子らに世の光を」ではなかった。 ――統合失調症などの当事者の活動拠点「べてるの家」で出会った言葉に、なるほど、とうなった。「昇る人生から降りる人生へ」「弱さの情報公開」「弱さを絆に」「利益のないところを大切に」。 ――癌末期の男性患者Aさんが離婚した妻のところにいる息子に会いたいと騒ぎ続けていた。息子の消息がどうしてもつかめない。あるとき困り果てた看護師が「そんなに子どもに会いたいのなら」と、Aさんを小児科病棟に連れて行った。Aさんの表情がみるみる変わった。 ――病院とは白衣に象徴される「聖性」と、感情を持つ人間がまとう「俗性」の二つが混じり合う特殊な空間だ。だからこそ病院のアイデンティティが大切になる。「何のために私たちはこの場にいるのか」という問いだ。 ――「専門のことであろうが、専門外のことであろうが、物事を自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を表明できるようになるため。たったそれだけのことです。そのために勉強するのです。」(山本義隆) 私はこの本を読みながらいつしか「患者」を「生徒」に自動変換しながら読んでいました。「医療」は「教育」とか「歴史」に置き換えながら読んでいました。私が目標とする世界がここにあると思いました。 「教育」にしても「歴史」にしても、それを職業とする人々は、自分たちを孤高の専門家(プロフェッショナル)だと思い込みがちです。しかし、「序」の対談で加藤周一は、プロとは中世ヨーロッパの専門職集団(プロフェッション)に由来するもので、彼らは先人から受け継いだ知識・技術を「世俗の権威付け」にしないこだわりをもっていたと語っています。 しなやかに考え、境界をこえて実践していくこと、そして当事者をリスペクトしながら支えていくこと。そんな実践の大切さを色平先生の著書から学びました。素敵な書物と出会った大きな喜びを味わったのでした。