毎日新聞に書評が載りました(2024年1月6日)
毎日新聞に書評が載りました(2024年1月6日)
今週の本棚・著者:半田滋さん 『台湾侵攻に巻き込まれる日本』
◆半田滋(はんだ・しげる)さん
(あけび書房・1980円)
◇「有事」回避に何ができるか
中国は台湾に侵攻するのか。した場合に米軍はどう動くのか、動かないのか。日本はどう備えるべきか……。そうした関心に応じつつ、日本政府の安全保障政策の問題点に切り込む力作だ。
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射、威圧的な中国外交など日本を取り巻く国際環境は緊迫化している。政府は着々と「新しい戦争」への準備を進めている。「たとえば第二次安倍晋三政権以降に制定された戦争4法、つまり特定秘密保護法と安全保障関連法、『共謀罪』法と土地利用規制法。参戦のハードルを限りなく下げてきました」。各法が市民社会にとっていかに危険なのかを詳述した。さらに岸田文雄内閣が閣議決定した「敵基地攻撃能力の保有」や、防衛費の大幅な増額がアメリカの国際戦略の都合で決まってきたことも。
安全保障問題、自衛隊の取材は30年以上の第一人者だ。ただ、この分野にかかわることになったのは「偶然でした」。1955年生まれ。下野新聞を経て中日新聞に入社した91年に湾岸戦争が勃発、さらに自衛隊の掃海艇が現地に向かった。メディアが同行取材することになったが、防衛庁(当時)担当記者が参加できなかったため、代役となった。「あまり関心もなかったのですが。政治部に入って政治の取材をしたかったので」。そのまま防衛庁担当となった。
「防衛問題を専門にする」と覚悟したのは2000年代初め。米同時多発テロやイラク戦争など日本の安全保障にも関わる重大な事案が続いた。「自衛隊の過去の海外派兵や法律の変遷などを知っている、数少ない記者」の役割を背負うことになった。
東京新聞論説兼編集委員などを歴任、退職後も防衛問題の取材、執筆を続ける。「台湾有事」となったら、日本は何をすべきか? 「有事をなくすための努力をもっとすべきです」。本書でそのための具体策も示す。
最大の安全保障は戦争をしないこと。そのために政府、市民に何が必要かも考えさせられる。<文と写真・栗原俊雄>