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第62号

2022 / 02 / 21

「あけび通信」第62号をお届けいたします。

○-●-○-●【新刊ご案内】堀有伸/著『「ナルシシズム」から考える日本の近代と現在』○-●-○-●
https://akebishobo.com/product/narcissism
定価 1540円(税込み) 46判 156ページ
ISBN 978-4-87154-205-0 C3036 

元首相5人のEU書簡が大問題になったこともあり、
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220204-OYT1T50263/
福島県民調査での甲状腺検査の見直しが国会でも質疑されるようになっていますね。
https://twitter.com/cdp_kokkai/status/1494241306570530818
https://twitter.com/otokita/status/1491311901309300736

山口壮環境大臣は「2021年3月に公表された報告書(UNSCEAR)の中には『被曝した子供達の間で甲状腺がんの検出数が大きく増加している原因は、放射線被曝ではなく、非常に感度が高いもしくは精度がいいスクリーニング技法がもたらした結果』と報告されている」と答弁していますが、甲状腺がんが多発見されているのはスクリーニング効果だけでなく過剰診断であるということまでは認めていません。

過剰診断をもたらし子どもの人権問題、医療の倫理問題であることは、
昨夏に出した『福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか』(髙野 徹、緑川 早苗、大津留 晶、菊池 誠、児玉 一八/著)
https://akebishobo.com/product/fukushima-3
でまとめられています。
また、『福島第一原発事故10年の再検証 原子力政策を批判し続けた科学者がメスを入れる』
(岩井 孝、児玉 一八、舘野 淳、野口 邦和/著)
https://akebishobo.com/product/fukushima-2
でもこの問題に一章ついやしています。

さらに、コロナやワクチンをめぐるニセ医学や陰謀論、便乗商法とともに放射能に関連する問題にの理解を深めるテーマも盛り込んだ新刊『科学リテラシーを磨くための7つの話 新型コロナからがん、放射線まで』(一ノ瀬正樹、児玉一八、小波秀雄、髙野徹、高橋久仁子、ナカイサヤカ、名取宏/著)
https://akebishobo.com/product/restoration
でも、この過剰診断の問題について取り上げています。さて、原発・放射能問題というは上記ご紹介した本などで科学リテラシーを磨くことが市民に(とくに原発に反対する運動に)試されている課題だということとともに、私たち(とりあえず「日本人」とくくりますが)の精神構造の問題としてそれを変えていかなければならない課題でもあろうということです。

そうした心理学的あるいは社会病理学的な考察をまとめたものとして、
福島県南相馬市の精神科医・堀有伸さんの新刊『「ナルシズム」から考える日本の近代と現代』を『科学リテラシーを磨くための7つの話』と同時発売します。

本書で目的としているのは、
<私たちが直面することを避けている、逃してしまった可能性、失った命や富や名声の記憶、知識や経験・節制の不足から曝してしまった恥になるような出来事、取り返しのつかない罪などを意識から排除することなく、それを心の内側に抱えながら「これからの自分たちがどうしていくべきなのか」について、現実的に考えられるようになることです。
 その先に私たちの社会の成熟があるのだろうと考えています。>

まさに、件の書簡をめぐる問題にも引き付けて考えさせられます。

そして、
「社会において合意形成を上手に行えないこと
 ~東京電力福島第一原子力発電所事故への対応について~」
という章があります。

書簡では誤認しかつ稚拙に表現されている
「原発事故の健康影響について、どのように考えるか」について、
堀さんは次の通り応答しています。

まず、<幸いにして、2011年の事故によって飛散した放射性物質によって引き起こされた放射線被ばくが原因の、発がんなどの直接的な健康影響は軽微だと考えます。>
こうした事実認識すら、書簡のトーンもそうですが反原発の一部は容認しがたいのでしょう。
ここからボタンの掛け違いが起きるのです。

むしろ重大なのは、
<避難生活や地域コミュニティ・地域経済に与えられた打撃による、間接的な健康影響は深刻であった>ということです。

<私は福島県南相馬市で開業している精神科の医師ですから、原発事故が関連する重症のPTSDの患者さんなどの診療を担当しています。
原発事故が関係者に及ぼした「心の傷」の影響が広範であることは、深く感じざるをえません。
福島県では約2300人が震災関連死と認定され、宮城県や岩手県と比べても突出して多くなっています。
調査によれば、震災事故によって避難を行った老人施設や病院で、死亡率の上昇が認められています。
原発事故が地域に与えた間接的な健康影響が、大きかったことは明らかです。>

放射線被ばくの直接的影響がなくとも、避難するリスクなどで数千人の震災関連死を招き今なおも精神疾患含めた健康影響がある。
そうしたことは元首相の書簡では書かれていないし、実際、反原発の中ではほとんどこのことが語られない。
放射能の直接的影響がないと反原発はできないのか?と疑りたくなるくらいに。

さらに、<「政府の行うことは正しい」とする「タテ社会の論理」を逆転させるだけのナルシシズムが引き起こしている問題の例>として、
<原発事故後に起きた福島での甲状腺がんの過剰診断の問題>についても触れられています。
『福島の甲状腺検査と過剰診断』も紹介されながら、次のように述べています。

<チェルノブイリの事故の後で、科学的に検証された放射線による健康被害は、小児の甲状腺がんの増加と精神的な問題でした。
したがって福島の原発事故の後にも福島県内のすべての子どもを対象とした甲状腺がんを見つけるための超音波検査が実施されることになりました。
ここには、「政府や東京電力の誤りによって生じた被害を、見落とすことなく見つけ出して指摘する」という意思と、その意思を尊重する姿勢を示したいという行政側の意図が働いていたのだと考えます。
その思いには十分に共感できます。
しかし結果としてこれは、治療の必要性のない病変を見つけ出し、そのための治療の負担と心理的な苦痛を子どもとその家族に与える「過剰診断」という問題を引き起こしています。
検査によって癌であると判断され、手術を受けた子どもが200人を超えているのですから、その被害が軽微であるとは言えません。
 この問題の詳細については、参考文献として挙げた『福島の甲状腺検査と過剰診断―子どもたちのために何ができるか』という書物を参考にしてください。
このような問題が生じた要因として大きなものが2つあります。
1つは、超音波検査の精度が高すぎて、微小な病変でも見つけられるようになってきたことです。
もう1つは以下のような事情によります。
癌の自然史についての研究が進み、たとえ癌と判断される病変であっても、その成長が極めてゆっくりであるため、一生の間放置しても深刻な害をもたらさないような癌の存在が知られるようになってきました。
福島県の子どもに発見された甲状腺がんのほとんどもそのような性質のものだったのです。>

よく、放射能による健康被害は何十年もたってみなければ分からないから因果関係を否定できないと言われることがありますが、
そういうこととは別次元の過剰診断があるということに、上記にまとめられているように、そろそろ皆さんも理解していただきたいところですね。
さらに以下。

<福島の状況を知った上で国際的な機関であるIARC(International Agency for Research on Cancer)は、2018年に「原発事故後であっても甲状腺癌の集団検診はすべきではない」という勧告を出しました。
しかし、福島における甲状腺の検査は継続されています。
「政府の悪逆を暴く」という大義名分があれば、科学的な知見の積み重ねに基づく指摘を無視し続けてよいのでしょうか。
少なくとも、過剰診断という不利益が生じる可能性がある検査を実施するのならば、そのことの説明と、拒否してもそれが許容される雰囲気が必要です。
しかし、学校で実施された検診はそのようなものではなかったようです。
 「政府批判」のような形でタテ社会の論理に逆らうだけでは、根本にあるナルシシズムの問題は解決しません。
福島の甲状腺の過剰診断の問題には、太平洋戦争中の日本のような、「一度決まった路線は、科学的な立場からの指摘が行われようと構わずに、変更されることなく継続する」というナルシシズムの問題がはっきりと現れています。>

『今よみがえる丸山真男 「開かれた社会」への政治思想入門』(冨田宏治、北畑淳也/著)
https://akebishobo.com/product/maruyama
で取り上げられている「超国家主義」の「無責任の体系」とも相通じますね。
ただ悲劇なことに、
「一度決まった路線は、科学的な立場からの指摘が行われようと構わずに、変更されることなく継続する」
ということは、件の書簡の問題でも同じことが繰り返されているということです。 本書での堀さんの問題提起は原発・放射能問題にとどまらない、対米従属の安全保障・外交の問題も含んだ日本社会の精神構造がふんだんに考察されていますので、ぜひお手に取って読んでいただきたいです。

あけび書房代表 岡林信一

【3月3日発売予定新刊】
■琴天音/著
『体内時計にも個性があります』
定価 1760円(税込み)
46判 212ページ
ISBN978-4-87154-203-6  C2047
https://akebishobo.com/product/bodyclock

■一ノ瀬正樹、児玉一八、小波秀雄、髙野徹、高橋久仁子、ナカイサヤカ、名取宏/著
『科学リテラシーを磨くための7つの話―新型コロナからがん、放射線まで』
定価 1980円(税込み)
ISBN978-4-87154-204-3 C3040
A5判 184ページ
https://akebishobo.com/product/restoration

■堀有伸/著
『「ナルシシズム」から考える日本の近代と現在』
定価 1540円(税込み)
ISBN 978-4-87154-205-0 C3036 ¥1400E
46判 156ページ
https://akebishobo.com/product/narcissism

■冨田宏治/著
『維新政治の本質 組織化されたポピュリズムの虚像と実像』
定価1760円(税込み)
46判 204ページ
ISBN978-4-87154-206-7 C3031 
https://akebishobo.com/product/restoration

【3月20日発売予定新刊】
■イラク戦争の検証を求めるネットワーク編
『イラク戦争を知らないキミたちへ』
定価1760円(税込み)
ISBN 978-4-87154-207-4 C3031
46判 226ページ
https://akebishobo.com/product/iraq

【好評発売中】
■色平哲郎/著『農村医療から世界を診る 良いケアのために』
https://akebishobo.com/product/ruralmedicine
定価 2200円(税込み)
46判 378ページ
ISBN:978-4-87154-202-9

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