身を堕とした不幸よりも、しんじつ、まことを信じたい哀しい願いが溢れる―山本周五郎の「岡場」短編小説集。
周五郎の〝岡場所もの〟は、小島政二郎から「これほどの作品は、一人の作者が一生に何編も書けるものではない、荷風の〝娼婦もの〟を抜く」と激賞されたが、にもかかわらずそれらをまとめて収載した短篇集はこれまでなく、味わうにも種々の本を開くしかなかった。本書は、いわば〝岡場所もの〟の決定版ともいえるものになっている(「解説より」)。