出版社からのお知らせ
ウクライナ、パレスチナ・ガザ、ミャンマー……戦争が終わらない。
商売の取引に使ったり、引越しをすすめて一大リゾート地にする計画をちらつかせる。アメリカ・トランプがそうなら、プーチン、習近平はミャンマーのクーデター軍政権を支援してやまない。
どこを探しても、平和はない。倫理も法も、正義もない。
まったく絶望である。
しかし、と私に働きかけてくる声がある。
〝それでいいのか?〟
宗教ではこれを、〈霊性のはたらき〉という。待っていて与えられるものではなく、求めて獲得し、ことに立ち向かう力としてのそれ。「内心からの自主性を持った精神的推進力」である。
インド独立をすすめたガンジーも、アメリカ黒人の解放を訴え続けたアーサーキングも、アパルトヘイトに抗したネルソン・マンデラも、近くは突発的な厳戒令の発動にペンライトを光らせて立ちはだかった韓国民衆も、やむにやまれぬ心の動きを非暴力・不服従に託して行動した。
懐疑は批判の前提、批判は確信の通路(アラゴン)であるなら、〝これでいいのか〟のひと言は彼らを素晴らしい未来へと導いたと言えないか。宗教はもはや祈りの代名詞ではない。「戦争の時代」における徹底した抵抗と平和構築の思想と論理――他者優先、相互、共生、和解――である。
宗教がどこまで可能なのかを問う類を見ない一書。