人間と環境への低レベル放射能の脅威

著者・編者ラルフ・グロイブ、アーネスト・スターングラス/著 
肥田舜太郎、竹野内真理/訳

―福島原発事故放射能汚染を考えるために

高線量よりもむしろ低線量放射線の方が破壊的な場合があること発見し、ノーベル賞に匹敵すると言われる「ぺトカウ効果」。それをつぶさに紹介、原発・核実験の放射能汚染を徹底検証した世界的労作の初邦訳! 福島原発事故の放射能汚染の深刻さを見定めるための、そして未来を生きる子どもたちのための必読の書。

両著者は、世界的に著名な放射線化学、医学者。訳者・肥田舜太郎は広島で被爆し、その後、被爆者医療に奔走する医師。竹野内真理は、市民団体で国際担当、脱原発国際署名の活動に従事。両者ともに訳書多。

商品情報

発売日
サイズ・ページ数 A5判/340頁
ISBN 978-4-87154-100-8

目次

福島原発事故のさなかに -本書の概略と意義
アブラム・ペトカウ博士略歴

著者紹介

第2版へのまえがき  
ラルフ・グロイブ

本書の日本語版刊行に向けての序文  
アーネスト・スターングラス

序章  アーネスト・スターングラス

Ⅰ 生態学的考察
    1 生態系:生命の安息の地
2 まとめ
Ⅱ 原子爆弾と原子力発電所(生物学的影響)

    
1 核物理学の基礎

2 自然放射線からの被曝
3 人工放射能
4 放射線防護の概略
5 遺伝的障害
6 健康障害(体細胞への影響)
7 もはや存在しない放射線防護

8 放射性降下物による健康障害

9 原子力発電所による健康障害

10 ペトカウ効果

11 1981年の衝撃:最重要な人体の放射線防護データは誤り

12 完全に信用を失墜したICRP

13 リスクのない核廃棄物処分場は存在しない

14 石炭火力発電所と放射能


森林の死と放射能


1 新たな次元の森林の死
2 背景
3 オゾンについての仮説
4 特に危険な3つの放射性核種
5 森林減少の地図と放射能
6 森林の放射線生態学的観察
Ⅳ 基本的な社会政治的影響
1 問うべき個人における倫理感
2 誤った教育
3 欠陥の多い経済体制

Ⅴ あとがき
1 放射性降下物により犯罪発生率が増加する?
2 エイズの流行と死の灰:補助因子の可能性あり?
3 線量レベルの改定はまったく不十分
4 ペトカウ効果についての最新情報
5 森林の死:明らかになりつつある原子力との関わり
6 昆虫は放出放射能による真の障害を示すことができるか
7 未解決のホットパーティクル問題
8 1986年の米国での死にいたる夏
9 1986年の米国での沈黙の夏
10 核廃棄物処理は世界的に未解決
11 温室効果の影響
12 新BEIR
Ⅴ報告
13 死にいたる虚構
14 5万人から10万人の死
15 ICRPの新勧告

Ⅵ 第2版のあとがき
1 重要なホワイトの研究
2 強力な統計学的証拠
3 社会への影響
4 過小評価されるリスク
5 自然放射線との間違った比較
6 ペトカウ効果再考
7 偏見を持つ専門家の誤った情報
8 酸化ストレス
9 化学と医学によるペトカウ効果の立証
10 活性酸素による生物学的障害
11 生体内の防護メカニズム
12 子どもと放射線に関する国際会議
13 活性酸素とエイズの関係
14 ハンフォードの労働者
15 乳ガン:食物中の核分裂生成物との関係の証明
16 死の灰、低体重児と免疫不全
17 オークリッジ近辺のガン死亡率

参考文献(references)
グロイブ氏へのインタビュー記事

スターングラス博士の軌跡

訳者あとがき  肥田舜太郎

ペトカウ効果と今日的知見  竹野内真理


あとがき

著者略歴


アブラム・ペトカウ博士略歴 

 アブラム・ペトカウは、1930年6月1日カナダのマニトバ州ロウファームで生まれ、中学までは教室ひとつの地方の学校に通っていた。苦学生であり、高校卒業後、2年間教員として学費を稼いだ後、マニトバ大学に入学。在学中も製紙工場でのバイト、物理学部での採点のバイトをしながら、1956年に物理学の学士号を取得する。さらに医学部を卒業し、ウィニペグ総合病院でインターンをした後、エール大学の博士課程終了後の研究員として奨学金を受ける。
  1962年、ペトカウはカナダ原子力公社(AECL)の研究員となり、チョークリバー原発で働いた後、AECLの医学・生物物理学主任に就任。1972年、全くの偶然から発見した「ペトカウ効果」を発表。低レベル放射線被曝における「上に凸の曲線を描く効果」、すなわち現在では一般的に「逆線量率効果」として知られるモデルを提唱した。早期から、細胞膜で活性酸素により生成される過酸化脂質によって様々な疾病や老化が引き起こされることも指摘していた。
  ちなみにペトカウは、単独および他の同研究者らとともに、人工膜以外にも、白血球膜、幹細胞膜における実験や、トリチウム水を使った自然放射線レベルの線量の実験も行ない、在職期間中に92の論文を発表した。実験では、試料にラジカルスカベンジャーであるSODを加えると、このような効果が観察されなくなることからも、活性酸素・フリーラジカルによるメカニズムの説明を裏付けるとともに、生体内での放射線防護メカニズムについて多くの研究を行なった。
  しかし、被曝労働者の白血球におけるSOD研究をしている最中の1989年、政府からの研究費が打ち切られ、ペトカウの研究所は閉鎖され、以降、放射線研究のキャリアは断たれてしまう。翌年の1990年にペトカウは自らの診療所を開業し、2010年11月末に引退するまで医師として働いた。「神の手による完璧な美」と謳った分子レベルの世界において、知的チャレンジと研究をこよなく愛していたという。
  2011年1月18日、急逝。

 *経歴は本書より要約した他、一部を以下のページより抜粋
  http://www.passagesmb.com/obituary_details.cfm?ObitID=174000
価格 ¥4,180
(本体価格:¥3800)
【送料無料】
在庫状況:在庫あり。